今年も少数精鋭の近畿大野球部に強者が集う中、春季リーグ戦でひときわ鮮烈なデビューを飾ったのは伊波友和。先発を任された2試合で2勝を挙げ、近大の準優勝に貢献した。

「知らされたのは球場に着いてから」。優勝の行方を左右する立命館大との大一番、先発マウンドを託されたのはリーグ戦初出場の伊波。「思った以上に球が荒れた」と急きょの登板に調整不足を悔やむも、強力打線を5回2安打無失点に抑えてみせた。「立命が強いというのは聞いていたが、誰がどうとかはまだわからなかった。がむしゃらに投げていて誰に打たれたのかも覚えていない」。まだまだ勉強不足だというが、かえって対戦相手への恐怖心がなく、吹っ切れて投げることができた。

 春の成績については「めぐり合わせのようなもの。たまたま僕が投げた時にチームが勝てただけ」と謙遜するが、素直にうれしいと笑顔を見せる。田中監督は伊波について「立ち振る舞い全てが落ち着いている。マウンドさばきは1年生と思えないほど堂々としている」と評価。 自身も一番の持ち味は落ちついたマウンドさばきだと話す。「どの球がいいとかはまだ自信をもって言えないですけど、マウンドさばきだけなら」。打者の嫌がる投球や間をつくことが好きだという。少年野球の頃から場数を踏み身につけてきた。「今投げたら打たれないという雰囲気がある。今まで養ってきた勘のようなもの。これからも養っていきたい」

 地元沖縄を離れて進んだ大学野球の道。野球以外の敵も多い。沖縄出身者が少ない関西で知り合いもいない環境。特に苦労してるのは関西弁だ。「コーチや先輩がほかの人に怒鳴っているときでも僕がびっくりします」と言葉のキツさに苦笑。親元を離れての寮生活にもまだまだ慣れない。言い訳ではあるがと前置いた上で、ストレスから体重も減ったという。辞めたいという考えがよぎったこともあると打ち明けるが、「逃げです」と自分を戒める。大学に入ってからチェンジアップとスローカーブの精度が上がったものの、体重の減少によりスピードと制球力が落ちた現在。焦らずじっくりパワーアップしていきたいと前を見る。
 
 秋は全国の舞台に立ちたいと抱負を語る伊波。「まだまだ1年生なのでできる仕事をこなしたい」。チームの勝利が一番の目標だ。2人の兄の背中を追いかけ、物心ついた頃から野球に親しみプロ野球選手になりたいと夢見るようになった。「野球を続けさせてくれた親に形で恩返しがしたい。兄が社会人野球をしているがその上をいきたい」。冷静に自分を客観視する瞳は静かに次の舞台を見据えていた。

【一問一答】
◇野球を始めたきっかけ
兄の影響

◇好きな野球選手
伊波翔悟(沖縄電力)

◇ライバル
なし

◇モットー
明るく、楽しく、元気よく

◇ゲン担ぎ
とくになし

◇アピールポイント
マウンドサバキ

◇チャームポイント
わかりません

◇好きな食べ物
すし

◇好きな時間の過ごし方
ゴルフ

◇今、日常生活で悩んでいること
この環境に慣れること

●いは・ともかず(投手)
右投右打
沖縄県立美里工業高校出身
1996.5.1生まれ
178cm・72kg
50m走6.8秒
遠投95m