「ものづくり」という言葉が盛んに聞かれる。大阪府立大の小型宇宙機システム研究センター「SSSRC」は、「宇宙に自分たちのものづくりを届けたい」と活動している。「SSSRC」は、「Small Spacecraft Systems Research Center」の略だ。

 センターが発足したのは2005年4月。東大阪市の中小企業を主体として、2009年に打ち上げられた小型人工衛星SOHLA-1「まいど1号」。この設計・開発に大阪府大の学部生と院生が参加したことを機に、宇宙航空研究開発機構「JAXA」と大阪府大の包括協力協定が締結、大阪府立大学大学院工学研究科に同センターが設置された。

 同センターでは、学生を中心として衛星やロケットの開発に取り組んでいる。約40人の学生が電子工作やプログラミング、回路づくりなどを通して、それぞれ役割を持って活動している。

 製作しているのは、主に人工衛星と呼ばれる小型の宇宙機。大学の講義ではなかなか体験することのできないものづくりだ。JAXAなどが実際に打ち上げる衛星の機体の空きスペースに人工衛星を相乗りさせ、宇宙空間に放つという。過去に打ち上げられた機体「OPUSAT」の試作機は、約10cm角の直方体の底部に羽のようなパネルが2枚ついている。あくまでも相乗りという形のためか規格などに制限が多く、設計にも長い時間がかかる。また、発射や放出といった動作による衝撃はすさまじく、それらに耐えられる強度を備えることも必要だ。

 また「SSSRC」には、工学部以外からも参加可能だ。新入生が「缶サット」と呼ばれる空き缶サイズの模擬人工衛星製作を通して衛星づくりの基礎を学ぶ演習など、電子工作に初めて取り組む学生も、最終的には衛星づくりに携わることができるようプログラムが組まれている。

 10年目を迎えての今後の抱負は「継続的にものづくりができるような団体をつくること」。「やる気やモチベーションを大事にしたい」と意気込んだ。「ものづくり」を合言葉として集まった個人が意見を出し合い、形づくり、検証し、より良いものを生み出す糧にする。彼らの今後の活動に期待が膨らむ。

vol.270