VOL.263 あなたにとって、 短歌とは?
指揮棒の彗星のごとく落ちるとき インクは音へと姿を変える
「短歌」を詠む、というと難しいと考える人もいるかもしれない。しかし「日常のイメージを無理やり31文字に当てはめるだけで、すっと短歌になっちゃうことは多い。思っているほど難しくない」と大阪大学短歌会前代表の筆名・鈴木加成太さん(阪大・4年)は言う。
阪大短歌会の基本的な活動は、お題に沿って各自短歌を詠み、互いに批評し合う週1回の歌会。部員は現在およそ18人だ。年に1回発行している機関誌『阪大短歌』は今年で4号目になる。
他大の短歌会と比べて和気あいあいとしているのが阪大短歌会の特徴だという。「他大は厳しく批評し合う感じだけど、うちはいつのまにか語り合ってしまう」と鈴木さん。話しているうちに批評から外れて、雑談になることもしばしばだ。しかし、歌会の形としては一番いいのではとも。「それぞれが勝手に膨らませた妄想を、みんなで話し合う楽しさが重要」
昨年発行した『阪大短歌』3号は、銀のいちょうが舞い落ちる「阪大」をイメージした表紙が目を引く。短歌を手書きのまま載せたコーナー、短歌と写真・音楽を掛け合わせたコーナーなど実験的な試みがいっぱいで、反響の良さからほとんど在庫が残っていないという。9月には新たに4号も発行される予定だ。
4月に阪大で開かれたサークルオリエンテーションの際には、全15首の短歌をA4のビラに一首ずつ印刷し、配布した。阪大短歌会のものからアマチュア歌人やプロ歌人のものまで、短歌に詳しくない人にも分かるよう難しい短歌ではなく、分かりやすくてインパクトのある短歌を選んだという。「これが短歌!?」と言いたくなるほど斬新なビラの効果は絶大で、「明らかに短歌には興味がなさそうな子も、足を止めて見てくれた」と担当のななみーぬさん(阪大・4年)。「短歌に詳しい人から読んでもらったり褒められたりするのももちろんうれしいが、それ以上に短歌を知らない友達や家族から『いいね』『気持ち分かる』と言ってもらうこともうれしい」と話す。
現代表の筆名・若宮みやさん(阪大・修士課程)は、短歌の面白さを「全てを言葉にしてしまったら伝わらないところ」だと熱を込める。「事実ではなく情感をいかに表現するかが重要で、言葉で形を与えてしまいすぎると、かえって情感から離れていく。それが難しいところで面白いところ」と語る。表題の短歌は、若宮さん作の短歌で、自身でもお気に入りのものだという。そんな若宮さんに、「阪大短歌会」を短歌で表現してもらった。
初心者も短歌経験のある人もいちどおいでませ阪大短歌
▼あなたにとって、 短歌とは?
阪大短歌会のメンバーにとって、短歌とはどのようなものなのか。前代表の鈴木さんは「遊び」と回答。「規制があると、人は工夫して遊び始める。31文字という規制の中で、さあどうやって遊ぶか、みたいなところが面白い」と話す。一方、ななみーぬさんにとっては「記録」。言葉に留めておかないと忘れていってしまう、その時の感情や思ったこと、全てが瞬間冷凍されたものだという。「つらいことがあったときに自分の気持ちを31文字に言い表すと、驚くほど楽になったり他人とも分かち合えたりできる。よく短歌に救われる」。
そんな2人に、ちょうどテスト期間の今、「テスト」をお題に短歌を詠んでもらった。
プリントが空を横切る気まぐれな紙飛行機にすがたを変えて/鈴木加成太
不確定性原理の説明ききながら受話器かかえてまどろんでいる/ななみーぬ
コメントを残す