【6・7月号掲載】2016年卒就活 後ろ倒しメリットなし
経団連の指針で、経団連加盟企業の採用広報活動は3月、選考活動は8月に後ろ倒しとなった。内定式は例年通り10月解禁のため、企業が選考活動を行う期間は短期化。しかし水面下で選考活動を行う企業もあり、大手企業志望の学生にとっては「長期化」している。就活スケジュールの後ろ倒しに対し、長期化や学生の負担増加を始めとし、デメリットが目立つ。
水面下で採用 進む
指針通りに採用活動を行う企業がある一方で、経団連に加盟しない企業は独自のスケジュールで採用活動を行う。また、「8月まで待てない」と考える加盟企業が水面下で選考活動を行っていることなどが長期化につながっている。就活サイトJOBRASSを運営している株式会社アイデムの寺上卓さんによると、昨年アイデムが行ったセミナーの参加者は11、12月をピークに4月で激減。昨年は4月に選考活動が解禁されたからだ。今年は2月がピークで、3月に少し減り、4月と5月に激減したという。「学生が来ないのは、他に優先すべきことがあるから。つまり企業の面接はすでに始まっている」と分析する。実際、アイデムが2016年3月卒業予定の学生を対象として行った調査では、5月1日時点で「内定あり」と答えた学生は16・4%。正確な数は不明だが、解禁以前から水面下で選考活動を進める企業があるとみられる。
前例ない就活 迷い
前例がないため、企業も手探りだ。大阪大の学生・キャリア支援課の魚井慶太さんによると、卒業生による座談会や面接などを通して、リクルート活動を行う企業もある。また、冬季のインターンシップを採用の前段階と位置付け、インターンシップ時に会社説明を行う企業も見られるようになった。インターンシップを採用ルートへの入り口としている企業が存在する可能性もあるという。
水面下での選考が見られる中、「例年の学生は内定が出たら就活を終えていたが、今年は終わり時が難しい」と魚井さんは話す。早期に内定を得た企業を選び就活を終えてしまうという選択肢もあるが、本命の企業が指針通りに採用活動を行う場合、8月以降も就活を続けることになる。単に「内定を得る=就活を終えられる」とは限らないのが特徴だ。
学生に悪影響 懸念
学生が学業に専念できるようにと実施されたスケジュール変更だが、目的を果たしているとは言い難い。本来は卒業研究・論文に取り組む時期だが、水面下で選考が行われているため集中できない。指針に従えば8月に選考活動が解禁となるが、8月上旬に期末試験を行う大学もある。学業への影響が懸念される。
また、複数の企業で面接日程が重なってしまう恐れもある。10月の内定式までの期間が例年より短いことから、どの企業を選ぶか考える時間は少ない。「あらかじめ自己分析と企業研究をしっかり進めて」と魚井さんは呼びかける。
来年度も今年度と同様のスケジュールが予測される。後ろ倒しによるデメリットを念頭に就活に取り組む必要がありそうだ。
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