「何を教えるか」ではなく「何を学ぶか」――。学生に主体的な学習を促す授業形式「アクティブ・ラーニング」への注目が高まっている。社会からのニーズに応えるべく、大学はアクティブ・ラーニングの実現を目指す。実現に向けて大学教員の支援が課題となる一方、学生の学習に対する姿勢にも変化が求められる。

 アクティブ・ラーニングを実現するための取り組みはさまざまだ。具体的にはグループワークや、タブレット端末をはじめとしたICT(情報通信技術)の活用、学生同士や学生と教員によるディスカッションなどが挙げられる。可動式の机や複数のスクリーンを備えた「アクティブ・ラーニングスタジオ」のほか、「ラーニング・コモンズ」といったグループで学習ができるスペースの設置も進められている。

 関西大ではアクティブ・ラーニング実現の一環として、在学中の学生からなる「ラーニングアシスタント(LA)」をおよそ80人配置。授業中に学生からの質問を受け付ける。LAの他にも、相手と長期にわたり良好な関係を築くためのコミュニケーション力や知識を身に付ける「交渉学」の授業を今後始めるという。

社会のニーズ
即戦力輩出を

 大阪大教育学習支援センターの大山牧子特任助教によると、大学がアクティブ・ラーニングの実現を目指す背景には社会からのニーズがある。多くの企業で新卒生の育成を行う余裕がなくなり、即戦力となる人材を必要としているという。また、大学進学率が高くなり大学出身者を親に持つ学生も増えたため、大学の役割に対する社会的な関心も高い。経済産業省が「社会人基礎力」、文科省が「学士力」として定めるように、いわゆる「ジェネリック・スキル」を学生に身に付けさせることが大学に求められる中、アクティブ・ラーニングが注目された。

教員の支援課題に
学ぶ姿勢問われる

 課題は残る。「小中高の教員と違い、大学教員は教育を行う訓練を受けていない。いきなりアクティブ・ラーニング型の授業をするのは難しい」と大山特任助教は話す。教育方法や学習の評価方法について研修を行うなど、大学教員に対する教育支援が必要だと強調する。

 一方「いくらアクティブ・ラーニング型の授業が広まっても、学生自身が受け身なままでは意味がない」と大山特任助教は指摘。より主体的な学習のためにも「リフレクティブラーナーになってほしい」と求める。学んだことが自身の過去や将来においてどんな位置づけにあるのかを考え、これまでの経験や他の授業、課外活動などと結びつけて学びを統合的に捉えてほしいという。アクティブ・ラーニングの実現に向け、学生自身の学習への姿勢が問われている。 
   

用語解説

◇アクティブ・ラーニング
従来の一方向型の講義と異なり、学生がプレゼンテーションや課題解決などを行う授業形式。学生に主体的な学習を促す狙いがある。

◇ジェネリック・スキル
コミュニケーション能力や論理的思考力、問題解決力など、特定の職業を越えてあらゆる仕事で必要となる力のこと。