魚介風味を生かした塩味のスープ。飲み干したくなるスープの素材はなんと近畿大で養殖されたマグロだ。12月1日から期間限定で発売された、「近畿大学水産研究所監修 近大マグロ使用 中骨だしの塩ラーメン」はエースコック株式会社と近畿大学水産研究所のコラボで実現した。カップ麺は果たしてどのように生まれたのだろうか。

 商品化のアイデアは昨年の4月に石原克人さん(近畿大学関連会社経営支援部)と同僚の雑談から生まれた。近大は2002年にマグロの完全養殖に成功して以来、全国の百貨店や同研究所が出店する養殖魚の専門料理店でマグロを販売してきた。2013年にオープンした梅田と銀座の同専門店ではマグロの兜焼き、目玉の煮付けなど、あまり料理に使われない部位も食材として利用している。しかし、中骨を使うことは無かった。本来廃棄してしまう部位を無駄にしたくないという職員たちの考えと、より多くの人にマグロを味わってほしいという思いから、手軽に食べてもらえるカップ麺での商品化を発案した。

 冬季販売のカップ麺に多い醤油味や味噌味ではなく塩味にしたのには、だしの風味を際立たせる狙いがある。マグロの中骨をカップ麺に使用することに前例がなかったため、中骨からエキスを抽出することに苦労したという。冷凍したマグロを輸送する際は、エースコックの協力を得た。デザインにもこだわり、パッケージには「海のダイヤ」を イメージしたイラストを使用している。
 
 最近は近大が技術協力した商品が増えている。石原さんは「70年に渡る養殖魚の研究結果をこれからも社会に出していけたら」と語った。 (聞き手=沢田智子)

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