VOL.219 生き物の美しさ、アートで
「生き物の美しさを知ってもらいたい」という思いのもと、セミの羽やクモの巣をアート作品に。京都工芸繊維大の学生らによる「バイオアートクラブ」は、身近な生き物を使ったアート作品の制作に取り組んでいる。
「バイオアートという名前には、生き物をアートで表現するという意味を込めている。アートで表現することで、興味のない人にも生き物を身近に感じてもらいたい」と話す同大大学院2年の貝塚加奈さん。バイオアートクラブでは、学部生も交え、大学院生が中心となって10人ほどで活動している。活動の一環として、広島の被爆樹の落ち葉を使ったハンモックを土台部分も含め制作したり、ブルーライトやUVで発光するよう、蛍光タンパク質を入れた大腸菌を使って絵を描いたりした。生物や建築、デザインなど、メンバーがぞれぞれの得意分野の知識を持ち合わせる。
大腸菌のように専門的な生物を扱うこともあるが、普段はより身近な生き物で作品を制作する。セミやトンボの羽から作ったアクセサリー、クモの巣の標本、パンや野菜の顕微鏡写真などだ。「作品を見ることで先入観を取り払い、見る角度を変えてもらいたい。いつも見ているのに気づかなかったことを発見してほしい」。生き物の美しさを伝え、普段とは見方を変えてもらうことを目標に活動を続けている。よく見ると意外ときれいだと気づいてもらうため、あえてセミの羽やクモの巣を素材に選ぶ。セミの羽のアクセサリーは手作り市で販売したこともある。「本物だと言うと驚かれたが、買ってくれる人もいた。やりたかったことが実現できた」と貝塚さんは喜ぶ。
生き物だけでなく、宇宙や石ころにも美しさを感じる貝塚さんは「バイオ」だけでは物足りないと考える。「いろいろな専攻の人が集まってそれぞれの知識を出し合い、アートという形で表現できたら、すごく面白いと思う」。バイオアートから最終的には「サイエンスアート」へ。夢は広がる。
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