vol.215 学生創る “下町くつろぎ空間”
長屋が並ぶ下町、中津で住民の憩いの場となっているのがカフェ「At Orange」だ。学生が主体となって運営しており、「中津を好きになるカフェ」をコンセプトに地元のコミュニティースペースの役割も担っている。
店内はオレンジ色を基調とした空間で、スローテンポの洋楽を流してリラックスしてもらえるように気を配る。中津の農園で採れた新鮮な野菜を使ったメニューが充実しているのが店の自慢だ。店主の長尾周一さん(同志社大・3年)は「体にいい食材を使うのは当然。店に来てくれる人のことを考えたら自然と健康に気を遣うものを出すようになった」と話す。また、カフェを営む傍ら、週1回の頻度で夜間に就活セミナーやワークショップのほか「Orange会」という地域の人と中津について考える交流イベントを行っている。長尾さんは「カフェという形にこだわらず、地域の人が店に来てくれるようにさまざまな取り組みをしたい」と話す。新メニューを考えるときも地域の人を呼んで試食会を開いて感想を聞く。店と客の距離が近いのでリピーターも多い。
通信手段が増え、人と人とが対面することが少なくなった現代社会に虚しさを感じていた長尾さん。「直接人と触れ合える場を作りたい」と思い立ち、友人らと共に今年4月に店をオープンさせた。12人いるスタッフの中で8人が学生。学生スタッフの多くは「At Orange」を自主的な学びの場としてとらえている。就活イベントに参加して「At Orange」の存在を知り、現在スタッフとして働く西川直哉さん(関西学院大・3年)は「この店で働くのは自分のマーケティング能力を磨けると思ったから。運営や経営について身近な場で学びたい」と語る。カフェに集まる多くの人との触れ合いの中で、仕事について考えの幅も広がったという。
開店当初は客足も少なく、客層は若い人が多かった。次第にイベントを通して店のことが口コミで広がり、今では世代を問わずさまざまな人が足を運ぶようになった。「下町にあってオレンジ色の外観は太陽のように目立っている。ここにくると同年代の人だけじゃなく若い人と話せるからうれしい」と常連の霊崎(たまさき)信行さん(64)は話す。これからも「At Orange」は中津を照らし続ける。
コメントを残す