2014年8月15日、日本は終戦から69年を迎えた。同時に、日本の安全保障政策も大きな変化を見せている。先月1日、安倍晋三内閣は憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認を閣議決定。中国の軍事力増強や韓国の対日強硬姿勢などアジア情勢の変化を受け、抑止力強化を狙ったと言う。

 UNNは、集団的自衛権をめぐる諸問題を取材。4回にわたり、日本の自衛権を考える。

▶︎保持するが行使せず −これまでの集団的自衛権

 集団的自衛権の解釈を日本政府が初めて公的に示したのは、1951年の11月。国際連合に加盟する日本は集団的自衛権を保持しているが、憲法9条により行使は認められなかった。しかしどの程度までを集団的自衛権と見なすかという問題について、政府の見解は揺れていた。例えば、1991年の湾岸戦争ではクウェートを侵略したイラクに対して各国が集団的自衛権を行使したが、日本は武力行使を行う多国籍軍に対して経済的支援を行っていた。

 また、個別的自衛権と集団的自衛権の厳密な区別は困難という意見も。日米安全保障条約と在日米軍が憲法9条に反するか否かを争った1959年最高裁判決(砂川事件)の中で、田中耕太郎最高裁長官は以下のように述べている。

 今日はもはや厳格な意味での自衛の観念は存在せず、自衛はすなわち「他衛」、他衛はすなわち自衛という関係があるのみである。従つて自国の防衛にしろ、他国の防衛への協力にしろ、各国はこれについて義務を負担しているものと認められるのである。
 出典:田中耕太郎 最高裁判所長官(砂川事件判決文補足意見)

 この判決で、田中最高裁長官は他衛と自衛を同様のものとした上で、各国の義務でもあるとしている。

▶︎行使「限定」容認、歯止めはこれから —これからの集団的自衛権

 7月1日の閣議決定文では、日本と密接な関係にある国が攻撃された場合、1)日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由と幸福の追求権が根底から覆される明白な危険がある、2)日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない、3)必要最小限の実力行使にとどまる——の3要件を満たせば、集団的自衛権は憲法上許容されるとしている。また、安倍晋三首相は会見で先制攻撃や自衛隊の海外派兵は引き続き行わないと述べ、「限定容認」という点を繰り返し強調した。

 首相は、中国の軍事力増強や韓国の対日強硬姿勢などアジア情勢が変化する中、集団的自衛権の行使容認は抑止力強化につながると言う。しかし、閣議決定文には自衛隊の出動について「国家安全保障会議における審議等に基づき、内閣として決定を行うこととする」とあり、武力行使の範囲が政権によって拡大する恐れがある。政府は3要件を基に関連法の整備を進めているが、具体的な歯止めは見えていない。

▶︎変わりゆく自衛隊

 政府はこれまで「自衛隊は、『自衛のための必要最小限度の実力(=戦力ではない)』との解釈を提示してきたが、自衛隊は合憲かといった議論が続いてきた。

 自衛隊の活動は変化しつつある。2003年12月から2009年2月までのおよそ5年間、戦闘地域とされるイラクに派遣。1954年7月1日の設立から、初めてのことだった。派遣開始後、自衛隊への志願者は減少。トラウマや苦痛といった精神的後遺症から、5年間でイラクへ派遣された陸空海の自衛隊員のべ1万人のうち、帰国後の自殺者はおよそ28名に上ったという。

KJとSJ SJ解説 

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