積極的に学習 「現地でも通じた」

大学生になると、長期休暇や留学制度などを利用して、国外に出るチャンスが増える。英語に加え第二外 国語が必要となることも多い。ドイツへの音楽留学に向け、ある京都女子大生は1年生の頃からドイツ語検定を取得するなど積極的に勉強していた。留学後、「初めは音楽のために学んでいたが、今では音楽という目的がなくても、第二外国語を履修していたと思う」と話す彼女。今後もドイツ語の勉強を続けていくつもりだという。履修をおろそかにする学生に対しては、「もったいない。大学で学んだ語学だけでも十分通じるのに」と語った。

英語だけじゃないグローバル化

アンケートで学生からは「国際化」、「グローバル化」という言葉が多く挙げられた。近年スローガンとして掲げる大学も多いが、「グローバル化」に第二外国語は必要なのだろうか。

「グローバル化で重要なのは英語を使用することだけではない」と話すのは神戸女学院大の第二外国語委員会長を務める孟真理教授。第二外国語とグローバ ル化の関係について「自分の価値観と相対化し、異なる文化を身近に感じることがグローバル化していく社会では必要」と語った。「その国特有の表現に触れることができる外国語は、互いの文化を理解し合うための手段でもある」。

英語だけでは一つの文化の思考や常識にとらわれてしまう。「グローバル化=英語」ではない。本当のグローバル化には、英語や母語以外で世界を見る「第三の目線」が必要だ。

社会に出て必要?第二外国語

アンケートにおいて第二外国語を学ぶ意味として「就職活動に役立つ」という意見があった。しかし阪大キャリア支援ユニットの 野村文子さんは「就活に第二外国語はほとんど必要ない」と話す。ネイティブのレベルで話すことができれば別だが、日常会話に困らない程度話せたとしても、優遇する企業は少ないという。まして大学が学習目標とする一般教養レベルでは就活で役に立つことはほとんどない。外国語検定などの資格を取得しても、語学能力自体は重要視されない。資格取得のために自主的に努力したという点がより企業側に評価される。

しかし第二外国語学習の利点は言語能力だけではないと京都大の塚原信行准教授は指摘する。「英語は重要だが、英語だけで十分だというのは勘違い。第二外国語を通じて、英語だけでは身に付けることができない広い視野をもつことが社会で重要になってくる」。

社会ではコミュニケーションツールとしての第二外国語ではなく、第二外国語を通して身に付く広い視野や考え方が重宝される。

学習時間が不十分 教えたつもり

大学の授業だけで第二外国語は身に付くのだろうか。塚原准教授は「大学設置基準の時間数に従えば、学習対象言語の土台を形成することはできる」と話す。

大学設置基準において、文部科学省は『一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準』と条文で定めている。半期1単位の授業を週2回、年間で 学習時間は180時間になる。対象言語や学習方法にもよるが、180時間あれば一定の言語能力を身に付けることは可能だという。「学生が合計何時間を言語学習に充てているのかを気にする教員はあまりいないし、毎日予習復習を欠かさないという学生も少ない だろう」と語る塚原教授。「授業だけで言語が身に付くかという疑問を発する前に、そもそも何時間を言語学習に充てているのかを問う必要がある」。

第二外国語にかける学びの時間が少ない学生が多い中、対策をたてない教員がいるのも大きな問題だ。

編集後記「広い視野が必要」

視野が広がる、教養となるなど第二外国語を学ぶ価値は誰にでもある。グローバル化を掲げる大学も多い今日では、英語を学ぶだけでは不十分だろう。しかし、いざ勉強しようとしても大学では第二外国語を 4年間通して学べるシステムが少ない。学生の自主性に任せられているのが現状だ。

第二外国語は入学時に履修する言語の選択が可能。将来必要だと考えられる言語を積極的に履修する人がいる一方で、卒業単位に必須のため、単位の取りやすい言語を選び嫌々履修する人も少なくない。

グローバル化が進む世界。日本の考え方だけでは不十分だ。言語 を学ぶことは、さまざまな国の考え方や文化を知る有効な手段となる。必要性が低いと感じている学生の多い今、一度自分の将来と第二外国語を見つめ直してみてはどうだろうか。