プロ野球9球団のスカウトが視察する中、開幕戦を迎えた京都大・田中英祐。ドラフト候補としてスタートした今季は10試合に登板し、自身最多の3勝を挙げた。第5節の同志社大戦では京大23季ぶりの勝ち点獲得に大きく貢献。さらに田中の進路に注目が集まるシーズンとなった。今季を戦い終えた右腕の心境に迫る。

――自身最多の3勝を挙げた今季をどう振り返りますか?
悔しいシーズンでしたね。あともう1つ勝ち点が取れていれば最下位から脱出できて、京大の歴史を変えられていま
た。個人としては飛躍した印象は無かったです。自分の力の無さを痛感しました。全体的にチーム力が上がり、周りに助けられました。

――同志社大戦では23季ぶりの勝ち点を獲得しました。
今シーズンはチーム内で勝ち点、勝ち点と言い続けてきました。勝ち点を取ったことは、チームとして大きいですし、うれしかったです。勝ち点を取った後はチームが勢いに乗り、伸び伸びとプレーできました。ただ、気持ちが舞い上がってプレーに集中できなかったことが、その後の4連敗につながったと思います。

――今季自信になったことは?
強いて自信がついた部分を挙げるとしたら、第5節の同志社大戦の1回戦で、雨でグラウンド状況が悪い中、思い通りのピッチングができて、完封したことです。やっぱり悔しかったのは、勝ち点を取った後の試合。試合間隔が短くて疲労もあり、しんどかったです。勝ち点を取って、周りからのチームの注目度も全然違いました。

――周りから注目を集めていますが。
周りの目を気にせず、自分のプレーに集中するようにしています。スカウトの目も気にしないように。周りを気にしないようにするのは難しいですが、自分のやるべきことをやらないと後悔するので。普段通りに自分のプレーをすることが大事だと思っています。

――学業と野球の両立は大変ですか?
昨年は研究が忙しくて、十分な調整ができないまま投げていたときもありましたが、今季は野球に集中でき、ちゃんと練習に参加できていました。

――マウンドでは気迫のあるピッチングが印象的です。普段はどんな性格ですか?
一言で自分の性格を表すと、ルーズ。でも、普段とマウンドに立っているときとのギャップがあるみたいなんですよ。チームメイトからは投げているときは怖いって言われます。自分から迫力を見せようと意識しているわけではないんですけど、周りからの見え方が違うみたいです。

――秋季リーグまでに取り組みたいことは?
まずはピッチングのレベルアップ。ピッチングの質を下げず、1つの節で1戦目と3戦目を任されてもしっかり投げられるよう、基礎を重点的に、秋に向けて一から体づくりをしたいです。緊迫したゲームが増えると、今までとは疲労度も全然違います。自分の弱いところを見つけて、優勝に貢献できるように「勝てるピッチャー」を目指して普段の練習からきっちりやっていきたいです。

――プロから注目されていますが、進路についてどう考えていますか。
進路についてはゆっくり考えたいです。少しずつ考えてはいますが、周りが落ち着くまで、まだ言えません。来るときが来れば言うと思います。

進路について明言を避けた田中。だが各メディアにも取り上げられるなど注目度は上がる一方だ。8月には阪神タイガースの2軍との練習試合も予定されている。
成績がドラフトへの評価に大きな影響を与える秋季リーグ。田中にとって重要なシーズンとなりそうだ。

◎プロフィール
田中英祐(たなか・えいすけ)
京都大・工学部4年
右投右打 最速148キロ
身長180cm 体重75kg
今季の成績:3勝5敗
タイトル:2013年度秋季リーグベストナイン
 148キロのストレートと多彩な変化球で相手打者を翻弄。今季はスプリットも習得した。2012年度春季リーグでは先発した試合で、京大60連敗の記録をストップ。さらに2013年度秋季リーグの立命館大戦で、21回を無得点に抑えるなど驚異的な投球を見せた。今季は京大23季ぶりの勝ち点獲得に貢献。国際大会の大学日本代表候補に選出された。(※データは6/18現在)