「今年は個の力を追求したい」。普段は物腰柔らかな関西大のストライカーも、そう語る声には力が込もっていた。

 3月、九州で開催された「デンソーカップチャレンジサッカー」。各地方の大学選抜チームが集うこの大会で、FW原口拓人は関西選抜の一員としてプレーした。帰阪後の彼に会うと、目の色が違っていた。

 「やはり、選抜ではみんなが武器を持っていますね。自分と違うゴールの奪い方も学べて刺激的でした」。原口自身はというと、本大会では無得点と手応えをつかめず。シュートにチャンスメイク、PA内での一瞬の駆け引き…… 彼の武器は、レベルの高い相手の守備陣を前に鳴りを潜めたのだった。

 「キレイに(DFを)抜いてからシュートっていう形を意識しすぎて……」。原口の口からこぼれたデンソーカップでの反省の弁。昨季、彼が繰り返し訴えていたことにもつながる。少し遠めからでもシュートを打つ。あるいは、目の前にDFがいようがなりふり構わず突破を図る。そんな「強引さ、パワー」。そしてそれを可能にする「個の力」。これは原口が、ひいては関大サッカーが必要としているものだ。

 「中盤からPA付近までボールを運ぶ力で、関大に勝るチームはない」。昨年、関大を破ったチームの監督がこうたたえた。それを聞いた原口は喜ぶどころか、悔しげな表情を見せる。「でもそれは、FWがダメって意味にも取れてしまう」。続けて言う。「うちはシュートが少なかった。それでは相手にとって怖くない。入る、入らないに関わらず狙う姿勢が大事」。

 今季のリーグ戦も間もなく始まる。主力の攻撃陣には十分な戦力が期待できる一方、昨年4年生が中心だった守備陣には不安も残る。だが、「攻撃で圧倒できれば守備も楽になる」と原口は強気だ。「個の力のベースを底上げして、中盤もFWも攻めるサッカーで勝つ」。大学サッカーのラストイヤーを迎えるエースは、熱い胸の内をのぞかせた。

◇原口拓人(はらぐち・たくと)
1992年5月3日生まれ。FW。ガンバ大阪ユースを経て、2011年、関西大サッカー部に入部。U-16、U-17日本代表の選出経験もある。関大ではけがに悩まされるが、昨年はリーグ戦13試合12得点と目覚ましい活躍を見せた。