消費税率が4月に5%から8%へと引き上げられる。97年に3%から5%に引き上げられて以来17年ぶりとなる消費増税。市民の生活に影響を及ぼすことが必至となる今回の決定を大学生はどう捉えているのか。

社会文化2面.indd

UNN関西学生報道連盟では、関西の大学生123人を対象に消費増税に関する調査を実施。消費増税は「必要」という学生が8割を上回ったのに対し、増税の実施そのものには「反対」という回答が過半数に上った。また、増税での負担増加によるダメージで特に深刻なものを問う質問には、自宅生の間から「交通費」という回答が集中する一方で、節約できそうなものにはおよそ7割が「食費」と答えるなど、学生への大きな影響が浮き彫りになった。自由回答では「学生が恩恵を受けられるとは思えない」といった増税への否定的な意見が数多く寄せられた。

増税「今しかない」

意識調査からは、日本の財政状況が芳しくないという認識は共有されている一方、このタイミングでの実施への抵抗感がうかがえる。景気が上向いているという実感を持つ学生はほとんどいない。「なぜ今なのか」。関西学院大教授の上村敏之氏は、この疑問に「今しかない」と答える。

上村氏によると、大企業の業績改善や新卒の就職率上昇から、景気は「間違いなく回復している」。賃金の上昇は、春闘などの賃上げ交渉が進むにつれ徐々に反映されるという。

税率上昇 認識深める必要

「そもそも『税率が上がる』という認識が漠然としていないか」と上村氏は話す。「自分にとってどれくらい負担が増えるのか、計算したことがある人は少ないだろう」。日本学生支援機構の調査によると、下宿生の1カ月あたりの生活費はおよそ9万円。増税分の負担増は1日あたりで80円にも満たない計算になる。上村氏は「生活実態に即して考え、数量的に負担額を表してみることで見方も変わるのではないか」。

大学生の半数以上が奨学金を利用している。経済的に余裕がない学生も多い。増税に合わせて学費を見直す大学もあり、「少しの負担増でも厳しい」という声も。そんな中実施される、社会保障の財源確保を目的とした増税。上村氏は「学生が直接恩恵を与りにくい」と抵抗感に理解を示しつつも、「国というコミュニティにおいて、消費税負担は一種の連帯。九州や沖縄の人が(東日本大震災の)復興税を負担するのと同じ構造だ」。若年層も将来的に社会保障から恩恵を受けられるという事実で納得することが必要だと強調する。

負担の均一化が課題
「貧困層が追い詰められてしまう」。意識調査では、収入にかかわらず一律で増税されることに対する不安が多く聞かれた。
上村氏は「奨学金制度の充実など、増税によって受ける打撃が大きい学生へのケアが必要」と認める。注目すべき点として、相続税や所得税などの税制改正で国民全体の負担を均一化するための政策が増税に併せて行われることを指摘。一方で、「働いて稼ぐほど負担増を強いることになるという難しさも理解しなければならない」と話した。

~増税までの流れ~

2012年8月、当時の野田政権下で消費増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法案が国会で成立した。「経済状況の好転」を条件に、2014月に税率8%、2015年10月には10%まで引き上げることを決定。社会保障制度の維持・拡充が目的だ。昨年10月、安倍晋三首相が景気動向を確認し、引き上げの実施を最終決定した。政府は今年度、およそ5兆円の増収を見込んでいる。

【前葉慶和】