【1月号掲載】「買える」薬物・脱法ハーブ
「摂取は禁止」「お香です」などの売り文句で販売されている薬物がある。街中やネットで売られているが、法律ギリギリのラインにあるこれらは「脱法ハーブ」と呼ばれる。法の目をすり抜けているだけに警察も立件できず、野放し状態。もちろん大学生も購入が可能だ。 神戸のある大学生は、好奇心から脱法ハーブを購入した経験があると明かす。「商品番号と量だけを店員に伝えて買った。簡単に買える」。神戸元町の合法をうたうハーブ屋で購入したという。0・2グラムで500円。安価で販売され、また購入も容易だ。 「『節度を守って』楽しむ程度で、それほど危ないものではない」と話すのは、京都のある大学生。高校のころにハーブやキノコに由来する薬物に手を出し、大学入学後にも数回使用したという。「タバコと同じ感覚」とも言う彼。現在は使用していないが、「すごく疲れたときにやりたくなることもある」と語った。 では、なぜ危険な脱法ドラッグはなくならないのか。今まではある薬物を規制しても、少し成分を変えたものが作られるだけだった。しかし薬事法の改正に伴い指定された物質に似た薬物もまとめて規制されるようになった。加えて、大阪府は薬物条例を制定。国がまだ規制していない物質も、知事指定薬物として使用・所持を規制することが可能だ。これらの施策で大幅に規制対象は増え、「脱法」は難しくなった。 大学生のドラッグのきっかけについて、大阪府警察本部の木村さんは「一人暮らしを始めたときや、長期休暇、海外に行ったときが危ない」と警鐘を鳴らす。非日常にいると、安易に手を出してしまうケースも多いそうだ。 大阪で薬物依存症からの回復支援をしているFREEDOMには、毎年多くの薬物依存に悩む人が訪れる。代表の倉田さんによると、2011年度のハーブ依存者の相談件数は全体の3%だったが、翌年には36%と急増。36%のうち、25歳以下は62%と若者の間でハーブが流行している。ハーブは何千種類もの化学薬品を混ぜて作られるため、ハーブ使用によって病院に運ばれても医師がすぐに成分を見分けることができないという。それによって、迅速な対処ができないこともある。 さまざまな証言から浮かび上がってきた、大学生と脱法ハーブの近しい関係。出来心で人生を大きく左右する薬物は、未来を担う我々には絶対に必要のないもの。薬物を使用し逮捕された人の多くは「最初の1回をしなければ……」と漏らすそうだ。その「最初の1回」こそが、人生崩壊の序曲だということに気付かなければならない。
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