【本紙掲載】大学設置不認可騒動
◎新大学それぞれの事情・・・・・
では、ここ関西で近年新設された大学の現状はどうなっているのだろうか。2つの大学を例に挙げたい。
昨年、開学した宝塚医療大は、理学療法学科が定員の4倍の志願者を集めたが、鍼灸学科は定員割れを起こしている。一方、今年、開学した京都美術工芸大はまだ1年生のみだが学生数わずか29人。順風満帆とは言えない状態だろう。しかし、両大学とも特色ある教育を行っている。
2年目を迎える宝塚医療大は、理学療法士、柔道整復師、鍼灸師を目指せるほか、高校保健体育の教員免許も取得できる。ある1年生の女子学生は、「4年で少しでも多くの知識を得たくて(専門学校ではなく)大学を選んだ。新設の大学なので入学前は不安もあったが、専門性の高い先生が多くて満足している」と話す。なお、食堂のイスは増やされ、課外活動の団体数も増えてきているという。
一方、京都美術工芸大は日本で唯一「工芸学部」がある。工芸を学ぶ専門学校との違いについて、ある職員はこう話す。「専門学校は、修業期間も2年と短く、基本的には工芸の技術しか教えない。大学は語学などの一般教養もしっかり教える。そこが最大の違い」。さらに「4年かけて工芸を学びながら国際性など幅広い見識を身につけることができる。日本の工芸を世界にプロデュースできるような人を育てたい」という。大学でしかできない学びがあるのだ。
大学の全体数を削減するという議論も重要だが、「大学」といってもそれぞれまったく別個で固有の存在である。今後、削減に向かうならば、個々の価値と事情を考慮に入れた議論を望みたい。
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