どっと湧き上がる会場。人であふれ返る商店街。衰退する商店街を復興すべく、関西の学生が「笑い」を武器に立ち上がった。


 大会本番の午後3時になると、まちづくり大津百町館会場には50人を超える観客が詰めかけ、即座に満席となり、各大学の代表者5名による寄席が開始した。大会は、女御亭桜杏こと福井美穂さん(京女大・3年)が披露する「まんじゅうこわい」に始まった。本番前に福井さんは「落語は男性目線のストーリーが基本。そのハンデをどう乗り越えるかが肝心」と意気込んだ。その通り、落ち着いた声色で演じきった。優勝は大阪大落語研究部。代表の大阪亭水々こと内田圭祐さん(大阪大・3年)は「ちりとてちん」を間髪入れない絶妙なテンポで熱演した。「持ちネタに工夫を加えた。一般受けしやすいように、奇をてらわず基本に忠実に、なおかつネタを短縮し山場を凝縮した」と明かした。実際に、本来23分程度のネタを15分ほどにまで縮めたのだという。

 また本大会は、大津市の中心市街地商店街の活性化イベント「第四回大津100円商店街」の一端を担っている。第一回は昨年9月に、6商店街合同で開催。第三回からは新たに2商店街が加わり、全国屈指の規模となった。参加店舗数、来場者数も第一回(130店、2万8000人)、第二回(153店、2万7000人)、第三回(172店、3万4000人)と順調に推移。今回は155店が参加。イベントブースやスタンプラリーなども企画され、およそ3万1000人の来場者でにぎわった。

 関西学生落語大会の主催者である寺田武彦さんは「今回でイベントが定着し、安定期を迎えた。笑うことにより来場客には英気を養って欲しい」と語る。その一方で次回からは「昨今のいじめ事件による大津の悪印象を、落語の『笑い』で吹き飛ばしたい」と熱く語った。

 寺田武彦さんの息子でもあり、関西学生落語大会の代表を務める寺田悠太さん(早稲田大・4年)は、大学生の落語について「プロとは違って自由度が高い。型から外れた寄席も魅力」だという。運営について「本大会は、大津を知ってもらう絶好の機会。故郷の地域活性化に貢献するだけでなく、いずれ大会を『全国大会』に発展させたい」と述べた。親子二人三脚での落語による地域活性化は、今後も進展するようだ。