「謡本」は、能の謡の稽古用テキストであり、謡の詞とともに節まわしや舞の型を記したもの。展示の中には、本のタイトルを書いた題せん部分だけが木版の版木や、何度も表面を削り、 繰り返し新たな文字を彫るうちにすり減って薄くなった版木など、 珍しい版木もある。また版木のサイズや木版刷りについての説明や、これらの版木で実際に刷られた謡本なども展示されている。印刷技術は現在と異なるもの の、謡本の内容は現在のものとあまり違いはなく、近世から近代の能楽と印刷の文化をかいま見ることができる。

 版木は、能楽関連の書籍を専門に扱う出版社「 檜書店」から2001年に寄贈された。 同センターの職員らがそれらを10年がかりで整理した。版木のデータベースは同センターのホームペー ジから閲覧でき、資料名や謡の曲名を入力すると、写真つきで版木の情報が表示される。

 同センターは、こうした常設展や講演会以外に、蔵書の一般公開も行っている。 能・浄瑠璃・歌舞伎に関する資料を中心に、 各地の民俗芸能の資料を含め多数の資料を所蔵する。 資料は専門書ばかりでなく、謡本や古典芸能の入門書、漫画、 さらに職員らが撮りためた映像資料なども自由に閲覧できる。 古典芸能に特化したこうした研究所は関西に少なく、「古典芸能を学ぶ学生などにとっては、図書館より便利がよいはず」とのことだ。

 神戸女子大古典芸能研究センターのHPはhttp://www.yg.kobe-wu.ac.jp/geinou/index.html

【訂正】一部不正確な表現を訂正いたしました(8月31日17時)