ディベロッピング展は今年で3回目。昨年は開催されなかったが、主催者の強い意向もあり、今年再び企画された。2回目までは、完全に参加大の在校生主導で開催されていたが、今回からは卒業から4年以内の若手OB、OGの出展も募ることになり、規模も拡大した。また今回はゲストとして、2008年塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞した、写真表現大OBの藤安淳さんを招き、5日に会場内でイベントを行った。
 
出展者は、大阪芸術大や宝塚大など5つの大学、専門学校の在校生と、そのOB、OG。作者1人ずつに決まったスペースの展示場所が与えられ、大きな一点物が存在感を示す中に、多数の小さな写真をつなげた精緻な作品も散りばめられるなど、多種多様な作品が見られた。作風が自由なだけに、その大きな違いによって近い位置の写真同士が魅力を相殺しないよう、会場設営には特に注意が払われたという。
 
丸井雄介さん(大阪芸術大・2年)の「佇む臨み」。「おもわず立ち止まってしまうような景色は、何処かの異国の地にあるのではなく、自分達の生きるすぐ側に広がっているのだ」という紹介カードのコンセプト通り、何気ない橋が、水面に映し出されたされ対になっている風景を写し、モノクロプリントという形で表現した。設置された来場者用の感想ノートには「モノクロとカラーを会場でうまく組み合わせている」という感想もあり、作品そのものの魅力のみならず、会場全体を1つの作品として息づかせていた。

 今回代表を務めた玉置慎輔さん(大阪芸術大・2011年卒)は、「『芸術っぽい写真』が技術進歩で誰でも作れる時代になり、写真学科の数は減っている。また、デジタル化によって写真を撮ること自体も簡単になったことで、写真が軽く扱われている」と、現在の日本の写真界について述べた。欧米諸国と比べ、日本には鑑賞目的の写真を買う文化が根付いていないことも指摘し、「だからこそ写真をやりたいと言って大学に入った人の写真を見る機会を作った。出す側も、発表する場を作って作品を学ぶだけでなく、発表で見えてくる世界があるはず」と話した。
 
玉置さんは「もっとこういう発表の機会を増やしたいし、日本の写真業界も盛り上げていきたい」と今後の意気込みを話した。4月から準備を始めても「ギリギリだった」という今回の展示会から得た反省をもとに、第4回に向けて早速始動していきたいそうだ。「4回目は期間も長く規模も大きくしたいし、出展作品のカタログ作りなど、やりたいことはまだまだある」と、玉置さんの気持ちは早くも次の成功に向けて動き始めている。