試合終了後、ほとんどの選手が泣いた。セッター日隈主将がいない中で戦ってきた今秋リーグ。リーグが始まる前、川島監督は「下位リーグも覚悟していた」という。日隈に代わってゲームキャプテンを務めてきたサイド加藤はいつも不安と戦っていた。「試合前は勝つかな、負けるかな、ということばかり考えていた」。「勝てる」と自分に言い聞かせることもできない状態だった。
 そんなチームが優勝争いをするまでにのぼりつめた。「4年生(日隈)のために」。思いは一つだった。

 第1セットは出だしでいきなりの5連続失点。相手レフトに同じコースを2本連続で決められるなど、まだ選手たちには硬さがあった。そして1319の場面で、日隈がコートに帰ってきた。今季初出場の日隈。10日前から練習に参加していたという。「勝負がかかったら使おうと思っていた」と川島監督。まだまだ万全な状態ではないものの、監督は日隈を信じていた。
 
 第1セットは奪われたものの、第23セットを取り返し、このまま優勝を決めるかに思われた第4セット。京都橘大も引き下がらない。意地と意地のぶつかり合いは最終セットまでもつれこんだ。
 互いに一歩も譲らない展開のなか、龍谷大にアクシデントが発生した。1313の同点で、センター松崎が着地に失敗し、左ひざを負傷。龍谷大のベンチは時間が止まったかのように凍りついた。しかしそんなピンチでも、以前の龍谷大とは違う空気が流れていた。春季リーグのときは、日隈だけが声を出してチームを引っ張っていた。だが、日隈がいない中で秋季リーグを戦ってきた彼女らは、チーム全員が互いに声を掛け合うまでに成長していた。
 そして再び一つになったチーム。その時前衛にいたサイド吉野が、気持ちを切ることなくスパイクを決め続けた。「絶対負ける気がしなかった」(吉野)。最後はセンター田井中のフェイントで、龍谷大サイドが歓喜に湧いた。
 最優秀選手賞と猛打賞の2冠に輝いた加藤は、「(今秋リーグは)いつもより長く感じた。優勝できてほっとした」と安どの表情を浮かべた。4季連続優勝というプレッシャーを乗り越えた選手たち。「みんなを信じていた」と日隈。下級生の成長と、より一層の団結力を得ることができたリーグ戦だった。優勝が決まった瞬間、満員の応援席からは歓喜の声とともに、しばらくの間チアスティックの音が鳴り止むことはなかった。吉野は以前、「人が見ていて感動するようなチームになりたい」と言っていた。チームの成長は、周りの人々の心を動かすほどになっていたのだ。
 しかし川島監督は言う。「今日の試合の内容には満足していない。このままでは全日本(インカレ)で勝てない」。このチームで戦えるのもあと数カ月。まずは関西インカレを突破し、全日本インカレのコートで、彼女らの笑顔がみたい。
 

●関西大学バレーボール連盟女子秋季リーグ(10月23日・千里金蘭大体育館)
 

龍谷大(9勝1敗) 3 22-25 2 京都橘大(8勝2敗)
25-22
25-22
21-25
17-15