立命、5年ぶり社会人王者を撃破
最後の1秒まで立命の守備力は最高だった。立命が4点リードで迎えた残り7秒。パナソニック電工のQB高田が自陣40ヤード付近から投げたボールは大きい孤を描いて高田が8年間連れ添った「女房」のWR長谷川へ向かった。しかし、そこで立命のDB毛利がエンドゾーンでインターセプト。最強と言われ続けた高田と長谷川のホットラインを断ち切り、立命が勝利をもぎ取った。「自分の方に来たら何が何でも捕ろうと思った。最後のボールは僕だけでなくディフェンス11人で掴んだ」と窮地を救った毛利は興奮冷めやらぬ表情だ。 「奇跡だと思っている。最高のゲームができた」と古橋監督。劣勢と言われた下馬評を覆し、立命が頂点まで上り詰めた。 立命最初の攻撃シリーズ、QB松田から中央でパスを受けたTE森が先制TD。試合開始早々に勢いをつけた立命はその後、K砂原のFGやRB松森のTDランで前半に相手を突き放した。最優秀選手に選ばれたQB松田大は最初のシリーズで先制点を奪えたことで「全然いけるって強い気持ちが持てた」と自信をつけ、冷静な判断でチームを指揮した。 また守備では前半にDL武知が2本のQBサックに成功し、相手に反撃を許さなかった。小学校から大学までパナソニック電工のQB高田と経歴が一緒の武知にとって高田はずっと雲の上の存在だった。大学進学を決める時、憧れの高田がいた立命に入学。「いつか高田さんにサックを決めたいと思っていた」と武知。その思いが大舞台で叶った2度の瞬間だった。 攻めでは決められた動きを着実にこなして点を重ね、守備では粘り強さで相手を最小限に封じ込んだ。「技術力でも体力でも(パナソニック電工に)劣る。でもチーム力は勝る」と古橋監督は選手たちに言い続けてきた。スーパースターがいるようなチームではない。それでも「団結力で補っていった」と副将のLB海島は晴れ晴れした表情で話した。 立命がオンワードスカイラークスにライスボウルで白星を挙げた2004年。そこから学生王者が社会人に勝利を挙げることから遠ざかっていた。 9月下旬から主将の浅尾が左アキレス腱を断裂し、出場が絶望的になってから約3カ月。「浅尾を日本一の主将に」という約束をチーム全員で守りきり、再び立命は学生が社会人に勝てることを5年ぶりに証明した一戦だった。 ▽立命選手のコメント ○主将浅尾(4年) 「トロフィーを持って重たいと感じた。まだ実感がない。みんなが(日本一の主将に)ならしてくれました」。 ○副将海島(4年) 「この1年取り組んできたことが正しかったと証明できた。成長させてもらった」。 ○RB松森(4年) 「勝てて良かった。浅尾はチームができた当初から引っ張ってくれた。浅尾を日本一の主将にしたかった」。 ○QB松田大(3年) 「最高に嬉しい。周りが助けてくれた。努力してきたことが自信に繋がった。(来年は)オフェンスは3回生が多いので最強のオフェンスにしたい」。 ○DL久司(4年) 「勝った瞬間は、人生で一番嬉しかった。春から最弱と言われて悔しかった。この気持ちが勝利に繋がった」。 ○DB町(4年) 「高田さんが走ってきたら一人では止められないので全員で止めた。個人では相手が上だが、チーム力で。チーム力ではどこにも負けない」。 ●アメリカンフットボール選手権「第62回ライスボウル」(1月3 日・東京ドーム) 立命 17 10-0 13 パナソニック電工 7-10 0-3 0-0
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