ノーベル賞の受賞で一躍時の人となった益川氏との対話集会の開催は、当日の11時頃KULASIS(京都大学教務情報システム)を通じて学生たち に伝えられた。ノーベル賞受賞者の話が生で聴くことができるめったにない機会ということで、開催場所となった理学部6号館は開演前から多くの学生でごった がえし、館外に人があふれるほどだった。

 超満員の会場に、益川氏が入場すると、学生たちから割れんばかりの拍手が沸き起こった。講演はまず、ノーベル賞受賞に至った益川氏の業績と経歴の 紹介から始まり、次に益川氏から若手研究者へのメッセージが伝えられた。この中で益川氏は、語学が苦手だった自らの学生時代のエピソードを紹介しつつ、物 理が好きになった動機などを話した。また大学生の勉強方法として、「同年代の学生同士で議論することで、理解に厚みが出、競争心がエネルギーに変わる」と 述べ、議論の重要性を指摘した。

 講演開始15分後には、松本紘総長から祝福の電話が届いた。総長は、今回の益川氏の受賞について、「若い学生、研究者に多大な良い影響を与えてくれている」と称え、「これからも京大は若い研究者を伸ばす環境づくりをしていく」と述べた。

 その後は会場の学生から益川氏に様々な質問が飛んだ。研究の仕方についての質問に益川氏は、大学時代の数学の先生が、やりたいことには手を抜かず 高い目標を掲げて着実に、という意味で言った「高眼手低」という言葉を紹介し、「目標は苦しくても下ろしてはいけない」とアドバイス。更に、自らの学生時 代を振り返りつつ、「一つの学問を専攻したら、その比較となる学問をその半分くらいの情熱でかじってみるのもいい」と話し、若い研究者に向けては「若手研 究者にはちゃめちゃなエネルギーが必要。それが学問の発展にも重要」と語りかけた。また「男子学生の比率が極端に多い理学部で、どうやって生涯の伴侶を見 つけ出したのか」という質問にも軽快に答え、その語り口に会場は度々笑いに包まれた。

 講演後、益川氏は大きな拍手に包まれて退室。写真を撮ろうと部屋の外で待ち構える学生もいた。以前一度益川氏を見たことがあったという、理学部で 物理学を専攻する博士課程3年生の学生は、「物理学をやっているので、お祝いの意味もあって講演を聴きに来た。(益川氏は)思ったことをずばずばという理 論家らしい方だと思った」と話した。