最後の打者をキレのある直球で空振り三振に切り捨てると、思わずガッツポーズが飛び出した。3日前に登板した2回戦に続き、田中宏は2戦連続の先発マウンドでライバル近大打線の前に仁王立ち。緩急を有効に使い、わずか3安打に封じ込めた。

 優勝を大きく手繰り寄せる価値ある勝利。藤原大など、打線がたたき出した得点を最後まで守りきった。

 「疲れは残っていたが、味方が声をあげてくれていたので頑張ろうと思った」と田中宏。松岡監督は「田中にははっきりエースだとは言っていないが、エースだと思う」と絶賛した。

 守備にも助けられた。最大のピンチとなった8回だ。一死一、二塁から三野の左邪飛を、左翼手の長谷川が俊足を飛ばし好捕。さらに、続く藤川には左前適時打を許すも、長谷川からの送球を受けた捕手の乗替が好判断を見せ、暴走した藤川を二塁で補殺。追加点の機会を与えなかった。

 第2節1回戦の関学戦。6回を無失点に抑えていながら、田中宏は右手中指のマメを潰し、無念の降板をした。以降、この節まで治療に専念し、登板はなし。チームメイトで同じ3年生の藤原正が試合で好投を続けているのをベンチで見て、「チーム的には嬉しいけど、個人的には悔しかった」と話す。それだけに、近大戦のマウンドは、これまでのうっぷんを晴らす絶好の場だった。

 次節に行われる近大-関大の結果次第では、自動的に優勝が決まる可能性がある。だが、指揮官は「我々は同立戦へ向けて再調整するだけ」と話す。主将の乗替も「同志社は簡単には勝たせてくれない。いつも通りの野球をするだけ」。まずは、目の前の「同立戦」へ向け、集中するだけだ。

●関西学生野球春季リーグ第6節3回戦(5月15日・西京極球場)

  1 2 3 4 5 6 7 8 9
大学1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1
大学2 1 0 0 0 2 1 0 0 4

【近大】●滝谷、谷口、安部、中後-國本
【立命】○田中宏-乗替