昨秋の明治神宮大会出場を懸けた関西地区代表決定戦。近大は優勝候補と目されながら、佛教大、大経大にまさかの連敗を喫し、涙をのんだ。だからこそ、今春はリーグ戦を連覇して、大学野球の聖地・神宮へ戻りたい気持ちが強い。注目は、昨春に1試合23奪三振の記録をつくったエース巽だ。

 春の輝きからは一転、昨年の秋季リーグではベンチから試合を見守ることが続いた。原因は、初戦の関大戦での惨敗だった。巽らしいフォームバランスが崩れ、ボールを離す位置が高くなり、制球が定まらなくなっていた。今まで監督に一度も叱られることはなかった巽だが、その日のミーティングで初めて怒鳴られた。監督とは新宮高の先輩と後輩の仲。その関係があるからこそ、初めて怒られた経験は巽にとって大きな意味をもった。巽は「逆に期待されているんだと思えた」と話す。

 春にかける思いは人一倍強い。広島の呉市で17日間のキャンプを行った。投げるスタミナ作りと腕を振り切ることを目標に気合の1551球投げ込んだ。崩れていたフォームも、地道な走り込みで正確な形に戻ってきた。

 「昨年の春は周りの先輩に引っ張ってもらった。ついていこうと必死になった分、良い結果もついてきた」。

 今年は自分が最上級生。「目標はもちろん全国制覇。そのためにも今回は自分が引っ張っていくことを意識していかなければいけない」。

 榎本監督も「もちろん今年は優勝、そして神宮大会は準決勝まで進めるように頑張るのが目標」と話す。昨秋活躍した、滝谷と谷口。それに、エース巽が復活すれば、鉄壁の投手陣「3T」が完成する。近大が再び黄金時代に突入するのはもうすぐだ。