若きエースが立命を逆転Vへ導いた。「必死に何も考えずに動いた」。1年生アンカーの寺本は区間新記録で走り抜き、ゴール前で勝利の雄たけびをあげた。

 「どうにか追いついてくれ」。相澤主将から寺本へたすきが委ねられたとき、トップを走る京産大に24秒差をつけられていた。それでも、寺本は勝利を信じて小さく見える京産大の背中を無我夢中で追った。

 肩にかけたたすきには、チームメイト全員の思いが込められていた。レース直前に、立命はメンバーを体調不良で変更するアクシデントが発生。さらに、3区までは第一工大に独走を許す苦しい展開が続いた。それでも、チームは諦めなかった。4区の古林と5区の河原井は、京産大と肩を並べながら先頭を追走。区間賞の快走で第一工大を一気に抜き去った。7区でこそ京産大に先を越されたが、先輩たちが作った流れを無駄にはしたくなかった。

 寺本は徐々にだが、確実に京産大との差を詰めた。4キロメートル地点を通過するときには、沿道にいる杉本コーチからの声援に笑顔で応える余裕すら生まれていた。「絶対に負けたくない」。そして、近江大橋を渡り終えようとするときだった。ついに、京産大をとらえ、そのままゴールまで突き進んだ。
 
 「一人ひとりが諦めずに役目を果たしてくれた。1、2回生に自力がついてきた」。杉本コーチは、試合後の記者会見で手放しに喜んだ。寺本は「最後にしっかり勝ててよかった。タイムもよかったし、4回生にも喜んでいただいて嬉しい」。

 全日本大学駅伝対抗選手権大会では14位に終わったが、劇的な逆転優勝で西日本の王座についた立命。いつまでも、東高西低とは言わせない。若い力は確実に成長を遂げている。来年こそ、全国の舞台で輝きを放ってみせる。

●びわ湖大学駅伝(関西学生対校駅伝競走大会兼西日本大学招待)(11月24日・西浅井町役場から膳所城跡公園)

1位 立命 4時間13分5秒
2位 京産大 4時間13分10秒
3位 第一工大 4時間19分11秒
4位 日本文理大 4時間21分40秒
5位 大体大 4時間21分43秒