同オークションは、芸大生の作家としてのキャリア育成を目的に開かれた。作品出品者は、事前に大手競売会社「サザビーズ」の元日本法人代表・柴山哲治さんらによる3回の講座を受講。そこでアート市場の仕組みなどを学んだ上で、オークション本番に臨む。本番では京都の芸大生ら27人が絵画や彫刻など77作品を出品し、オークション参加者に作品をアピールした。
 『Bitamin』が美術館に貸与されることになった吉村静さん(京都造芸大・1年)は作品が8万円で落札。規定により、半額の4万円が吉村さんのものに。陸上競技が好きで、トレーニングウェアなどの制作に興味があるという吉村さんは「世界陸上を見るための資金にします」と笑顔。「自分の好きなアートで得たお金で、自分の好きな陸上を見に行けるなんて素敵」(吉村さん)。『Good Bye To Your Kyoto City-西木屋』が同オークション最高額の96万円で落札された榊原太郎さん(京都精華大・4年)は「単純に嬉しいけど、それ以上に驚いた。別世界を見せられた」と話すも「今年で大学を卒業し、プロの作家になるため東京に行く。(最高額がついて)自信がついた。背中を後押しされた感じです」と笑顔で話した。また、落札者からは「将来性を買ったんだよ」との言葉も。
 今回の企画には、京大や同志社、立命など一般大学の学生らもスタッフとして参加。裏方として芸大生らを支えた。スタッフの鈴木陽子さん(京大・2年)は「オークションがはじまるまでは、本当に競りが成立するかどうか不安でした」と話す。しかし、オークションには多くの人が参加。売り上げ総額も予想を上回る約500万円となった。鈴木さんは「うまくいってよかった。(作品が落札されたときの)作家さんの嬉しそうな顔がすごく印象的でした」と話した。
 「公務員になるためのキャリア教育はあるのに、作家になるためのキャリア教育はなかった」。財団法人大学コンソーシアム京都・総括主幹の乾明紀さんが話すように、芸大生がプロの作家として食べていくための方法については、大学では教えてくれない。その意味で、今回のオークションはプロの作家を目指す芸大生に道を示したと言える。「今回の成功を契機に、(来年以降の同オークションで)どう次の一歩を踏み出すかが大事」(乾さん)。